日本のIT人材の行方2021
前回の記事ではベトナムのIT人材と今後の課題について触れました。IT人材に関する課題は日本でも同様に深刻な問題となっています。需要の伸び率が高かった場合、2030年には約79万人が不足するとも言われています。そんな日本のIT業界ですが、人材の特徴と、各IT企業でのエンジニアの採用傾向の変化はどのようなものでしょうか。今回は視点を日本に移し、日本のIT人材の現状と各国との比較をしていきましょう。
<目次>
・非IT人材と比較した時のIT人材の優位性
経済産業省が2021年2月に発表した「我が国におけるIT人材の動向」によると、日本のIT人材がIT企業で従事している割合は、アメリカやイギリスなど欧米先進国と比べてもかなり高く、他の業界と比べると東京のIT企業への集中が顕著です。
社会的な需要の増加を背景に、AIやデータサイエンスなど、高いスキルを持つ貴重な人材には、通常よりも高い報酬を提示する企業も大企業を中心に増えてきました。新卒でも能力によっては年収1000万円を可能にしている企業もあります。また、一般的なIT人材・非IT人材と比べると平均年収に500万円以上の差が見られることから、同業界の企業が人材確保に必死になっていることがわかります。
・日本のIT人材のスキルアップの取り組みについて
また、IT人材と非IT人材のスキルアップへの意欲を比べたデータもあります。IT分野の知識や技術は常に更新され続けています。昨日の技術が明日には時代遅れ…ということも当たり前な業界であるため、IT人材は常に学習し、新しいスキルを身に着けることが求められます。また、新しいスキルや知識の学習は、自身の市場における競争力や仕事、評価に直結し、その成果が目に見えやすい環境があります。このような業界の特徴からも、IT人材のスキルアップの取り組みは非IT人材と比較しても積極的で、市場や環境の変化の激化を認識していると言えそうです。
しかし、これは国内で比べた場合です。スキルアップ(勉強時間)について国際比較した場合、日本のIT人材の立ち位置はどうでしょうか。2017年の結果は以下のようになっています。IT人材の日頃の勉強の程度に関しては、業務外で勉強している日本のIT人材は60%程度に収まっています。同結果はアジア圏の中国では95%、ベトナムでは76%です。
また、「業務で必要かどうか関わらず、自主的に勉強している」と答えた割合は12.5%であり、他国と比べて低い値になっています。また1週間あたりの平均勉強時間については、日本は1.9時間とインド(4.0時間)、ベトナム(3.5時間)、中国(3.5時間)などのITオフショア大国の半分ほどになっています。2NFはこの結果の背景には各国の仕事文化などの影響もあると考えますが、日本のIT人材がスキルアップにあてがう時間は海外のIT人材と比べて少ないという現状があるということです。
・「採用」から「育成」へ
ここからは企業側からみた日本のIT人材の評価と採用の傾向の変化について見ていきましょう。
2021年秋に株式会社ビーウェルインターナショナルが行った「「IT企業の新卒エンジニア採用」の実態調査」(対象:従業員数300人以下のIT企業の採用担当者)を見てみると、ITエンジニア人材が不足していると感じている会社は85%に上っています。また、新卒エンジニアの採用を行ったものの、5割以上の会社がその実力や人数に不満を感じていると回答しています。このことから、人手が足りないが新卒社員を雇っても数を確保できない又は技術レベルが低いため、実戦的な人手不足に歯止めが効かず、業務に支障がでていることがわかります。
このような背景もあり、企業側は新卒エンジニアの「採用」だけでなく、入社後の「育成」にも重きを置くことが必要になってきました。ベトナムのプログラマーは大学で専門的にIT関連を学んできた人材がほとんどですが、日本では文系や理系でもITを専門にしてこなかった人材がプログラマーになることも一般的です。その場合、独り立ちするまで2~3年ほど人材育成が必要になりますが、長期的に会社の中枢を担う人材を見据えるという点で、出身学部を問わないエンジニアの新卒採用を積極的に行っている企業が多いです。
・海外IT人材の登用
同調査では海外IT人材の採用についてのデータもあります。
IT人材不足を解消するために海外IT人材の採用に興味を持っているIT中小企業は50%です。また、海外IT人材に求める能力として、日本語能力、文化理解の2つが特に重視されているという結果がでています。実際に厚生労働省からは、「海外IT人材採用・定着ハンドブック」も公表されており、海外IT人材の採用を促進しています。
海外IT人材を採用する利点としては、以下のようなことがあげられます。
★海外の優秀な人材を確保できる
★グローバル経営の推進
★組織の多様化
現在日本で活躍する海外IT人材の主要国は中国、韓国、インド、ベトナムとなっています。
2019年における国別海外IT人材数は以下の通りです。
出身国 | 人数 | 2015年と比較した際の増加率 |
中国 | 31,361人 | 1.61倍 |
韓国 | 9,685人 | 1.76倍 |
ベトナム | 4,645人 | 3.16倍 |
インド | 4,479人 | 2.53倍 |
海外のIT人材は自身へのスキルアップへの意欲が非常に高く、日本語教育も充実している国も多いので、海外IT人材は、日本のIT業界を支える柱の一つになっていくことは間違いありません。しかし、海外IT人材を受け入れるには社内体制の整備や定着への取り組みも欠かせません。
そんな中、海外IT人材の活用の例として“オフショア開発”も主流になってきています。オフショア開発はコロナ禍でも、安定的に開発を継続することができ、コストも抑えられることから、今後より需要が高まっていくとされています。
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今回は日本のIT人材について見ていきました。
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