ベトナムとのオフショア開発におけるコミュニケーション
オフショア開発失敗の原因は、コミュニケーション問題が9割だと言われています。それは本当?
はい、その通りです。オフショア開発において一番質問されることの多いのが、コミュニケーションは問題ないかということです。対面で話すのも難しいのに、オンラインでコミュニケーションが円滑に進むのか、ベトナム人担当者は日本語を充分話せるのか、自分は英語を話す必要があるのか、結果としてスムーズに意思疎通はできるのか、不安が尽きない方が多いようです。
今回は、弊社2NFの経験上で、ベトナムとのオフショア開発におけるコミュニケーションに関する原因や問題、解決考案などの話をいたします。それを通して、オフショア初心者、同じ問題を抱えたIT会社は、失敗の根本的な原因を把握し、オフショアの悩みを解消していただければと思います。また、ベトナムオフショアに失敗した経験がある方にも見直していただければ嬉しく思います。
目次
1. 日本の課題
「ビッグデータやスマートデバイス対応、2015年問題や2020年の東京五輪など、日本の開発のニーズは増大している一方で、システム開発のリソース不足が問題になっている。優秀なIT人材は固定化しており、労働市場に出てこないため、中堅中小企業では大手企業以上に開発リソースの確保が難しい」。こうした背景からは、日本において海外の人材を活用するオフショア開発の普及は重要です。オフショア開発はご存知の通り、メリットがたくさん挙げられますが、日本のシステム開発市場は、約10兆円のうちオフショア市場が占める割合はわずか1パーセント程度です。
なぜそれ以上に拡大されていないのでしょうか。その原因は「日本のオフショア開発は失敗しているからです。1990年代から2000年代にかけて発生した数々の開発失敗事例の存在が大きい。成功例が生まれてくれば、徐々に市場が大きくなるでしょう」と言われています。日本のオフショアの成功率はわずか10%―現在のオフショア開発の成功確率は、その程度だと言われています。
2. ベトナムオフショア開発を展開する上での問題抽出
オフショア開発の主な受注先としては、インドや中国の企業が挙げられますが、近年では人件費の高騰やカントリーリスクの問題のため、委託先をベトナムやフィリピン、ミャンマー等という東南アジアへ移す傾向にあります。今回、人気のあるオフショア開発先のベトナムから、失敗事例を解読していきましょう。
オフショア開発の失敗事例にはやはり納期遅れや、低品質、仕様違いなどが挙げられます。そこには様々な要因が考えられますが、マネジメント不足、コミュニケーション不足や商習慣の違いなどが大きな問題点になるようです。オフショアがうまくいかない主な原因は異文化コミュニケーションだと指摘されています。
良いコミュニケーションがあってこそのプロジェクトマネジメントの成功 という原則を踏まえ、どのようにコミュニケーション問題を解決すれば開発プロジェクトを成功に導くことができるのか。 オフショア開発に関連する多様性を下記の4次元で表します。
言語の多様性
言語の多様性とは、オフショア開発で用いられるコミュニケーション言語が多様性したことを表します。日本のオフショア開発に用いられる主要言語は変わらず日本語です。しかし忘れられがちですが、外国人日本語はオフショア開発には多大な影響を及ぼす言語の多様性の一つであります。
地域の多様性
オフショア開発を委託する国や地域が多様化したことを表します。日本向けオフショア開発の主戦場は中国です。第2位がインド。この2か国を追う存在としてベトナムです。その現状に対して、一部の大企業を除き、中小企業には地域の多様性が議論されることはほとんどありませんでした。
なぜかというと、国際化を果たした製造業と同様に、ソフトウェア開発も国際分業体制に移動しています。したがって大手企業のオフショア開発の戦略として、大手システムインテグレータや本業で大規模に世界展開する会社は国際分業体制で、中国だけではなく、インド、または、ベトナムに案件を発注していると考えられます。国によって、発注の内容が違います。例えば、中国は中国に関しては、コスト面での満足度が比較的高い一方、品質面での満足度が低いです。
オフショア開発の主力である中国への発注業務は、詳細設計、プログラミング、単体テスト、結合テストの割合が高く、昨年度との比較では、詳細設計、結合テストの割合がやや増加する傾向にあります。インドへの発注業務は、要件定義、基本設計、技術研究開発、総合テスト等の上流工程や高度な技術が必要な業務の発注の割合が他国と比べて高いです。
新興国であるベトナムへの発注業務は、プログラミング、単体テストといった下流工程が主体です。昨年度から詳細設計、結合テストへの業務範囲が拡大しているように見られます。
組織の多様性
組織の多様性とは、「組織構造の多様性」と「組織運営の多様性」という2つに大別されます。
組織構造の多様性とは日本本社とベトナム法人といった親子関係、ラボ開発による長期的な開発要員の囲い込みなど、多様なチーム形態のことです。 一方、組織運営の多様性とは、組織運営上の大原則や価値観、運営手順、意思決定プロセスの多様性のことです。
文化の多様性
文化の多様性とは、組織で共有される暗黙の了解の多様性、価値観や判断基準の多様性、そして行動規範の多様性などです。 多様化により、コミュニケーション問題が発生しまいますが、多様性の中でも、特に重要な文化の多様性を扱います。国民文化がオフショア開発に与える影響について深く切り込みます。これまで、オフショア開発における異文化のコミュニケーションに苦労しているがうまく解決方法を見つけられていない会社や、これからベトナムとのオフショア開発を検討しており、展開の計画をしている会社を対象に、文化の壁を克服する方法、異文化コミュニケーションに関する問題解決フレームワークを紹介します。
3. オフショア開発の異文化コミュニケーションの問題解決の考案
3.1 異文化コミュニケーションとは
まず、文化とは以下のように定義されています。ハーバード大学の教授、ジェームズ・ピーコック(James Peacok) によると、「文化とは特定の集団のメンバーによって学習され共有された自明でかつきわめて影響力のある認識の方法と規則の体系に対して人類学者が与えた名前である」。
簡単に言うと、特定の集団が持つ生活様式です。国や個人だけではなく、小さな組織や巨大な多国籍企業にもそれぞれ文化があります。開発チームにも固有の文化が存在します。ですから当然、私たちは自社や所属するプロジェクトを取り巻く文化を知らずして、プロジェクトを成功に導くことなどできません。したがって、これからのオフショア開発従事者は、その役割や権限によらず文化への深い理解が求められます。
しかし、重大な問題が発生した時、オフショア開発プロフェッショナルたるものは「文化のせい」とは言わずに、見える化した操作可能な変数名にこそ注意を払わないといけません。この課題は後ほど、異文化コミュニケーションに関する問題解決フレームワーク、実行事例にて詳しく展開し、2NFの問題解決方法を説明させていただきます。
私たちの想像以上に、文化や会社の雰囲気などの目に見えない要素がオフショア開発の活動に作用します。(普段、常に毎日一緒に面対して仕事をしている同僚間でもトラブルが発生することが少なくないでしょう。それ以上コミュニケーションを取りにくいオフショア開発では、トラブルの発生は当然だと考えられます)。それに基づいて、人間関係スキルの重要性がうたわれています。(コミュニケーションの主体が人間で、うまくコミュニケーションをとるには対話するその人間が理解することが第一前提条件です。一番理解しやすいのはその人間の文化(その人の国の文化、会社の文化など)です。
文化の構造
文化には決定的な定義がないということですが、文化を扱う注意点を踏まえたうえで、文化の構成要素を視覚的に定義します。 第1層である最深部は常識です。常識は全員が理解している前提条件とも表現できます。第2層は仕事に対しての考え方です。最も表面にある第3層は、誰もが理解できる仕事のやり方です。
なぜ、異文化コミュニケーションは発生するのか。以上の3層中、第1層と第2層は日本企業と長年仕事をしていない、日本に住んでいないと理解しにくいと考えられます。最後の外側の第3層は、オフショア開発サービスを提供する初心者でも早期に理解して仕事ができると思いますが、問題発生の際、その問題の原因は仕事のやり方にあるのではなく、より深い第1、第2層にかかると言われています。
そして、長く日本企業のお客様と仕事をすればするほど、お客様の悩みや課題を掴みやすいです。委託を検討されている新規の日本のお客様には、必ず日本企業と仕事をしてきた経験年数を尋ねられます。目に見えないもの(常識、仕事の考え方)をお客様が一生懸命説明したくても、なかなかオフショア側に伝わらないことがよくあります。オフショア開発の経験が浅い場合、第1、2層に問題発生の原因があると、完全な意思の疎通に相当手間が掛かる恐れがあります。結局、開発期間が延長されることで、余計な費用を発生してしまい、オフショアならではのメリット(コスト削減)が失われ、優れた開発モデルであっても良くないイメージを与えてしまいます。
そのため、2NFのような日本のお客様と仕事をする経験が豊富な会社であれば、長年に渡って経験や知識を積み重ねたことで、開発プロジェクトを円滑に展開でき、成功する確率が高いと評価されています。
3.2 問題に対するアプローチ(問題解決の提案)
なぜオフショア開発において、異文化のコミュニケーションの把握は重要なのでしょうか。
マネジメントが機能する上で最も重要な条件の一つは円滑なコミュニケーションです。コミュニケーションが成立するには、異文化の相互理解が欠かせません。異文化の相互理解の前提条件として、プロフェッショナル責任が必要です。日越両国の会社がお互いに提携できるにはベトナム人と日本人それぞれの行動と価値観について、表面的な現象を説明するだけの見解、理解だけではなく、現象の根本を捉まえた本質的な理解が求められます。
その中、文化的多様性の尊重はその一つです。具体的に、カルチャーショック、異文化の「多様性」を尊重することが挙げられます。対応するためには事前にトレーニングを受けることをPMIは推奨しておりや信頼関係の構築が重要です。
異文化コミュニケーションとは
メッセージ送信者は、
① 頭の中でアイデアを思考し、
② 頭の中思考を翻訳(コード化)し、
③ 媒体を介して受信者に伝達します。
メッセージ受信者は、
④ そのコード化されたメッセージを復号し、
⑤ 意味を解釈し、
⑥ フィードバックを返します。
コミュニケーションの問題は、コミュニケーションの各プロセスに混入するノイズが原因となって発生します。ベトナム人と日本人のコミュニケーションの問題なら、2番目の翻訳(コード化)プロセスで外国語翻訳という難関に当たります。面対面のコミュニケーションなら、多少のミスがあったとしても身振り手振りやジェスチャー、顔の表情、声のトーンなどから会話の内容がだいぶ理解されています。しかしながら、オフショア開発では、電子メールという顔を見えない媒体を介したメッセージ伝達が主体となるため、問題発生の確率が著しく高まります。また、メラビアンの法則によると、コミュニケーションにおいて、話の内容などの言語情報が他人に与える影響はわずか10%に過ぎません。このことからも、文字情報によるコミュニケーションが主体となるオフショア開発の難しさが分かります。
結論として、日越の両国の会社が提携するには、ベトナム人と日本人それぞれの行動と価値観について表面的な現象を説明するだけの見解、理解だけではなく、現象の根本を捉えた本質的な理解が求められます。
ノイズが文化を構成するどの階層に属するのかを見極めることも重要です。ノイズが目に見える仕事のやり方に属するのであれば、問題解決は比較的に安易ですが、それに対して、目に見えない最深部の「常識」層に属する場合は厄介です
3.3 異文化コミュニケーション問題解決ステップの考案
異文化コミュニケーションの問題が発生した際に、如何に解決するのか次に説明いたします。
①↓ 異文化コミュニケーションにおける現象と問題の明確化
②↓ 問題の要因分析、ホフステードの各異文化的次元を導入して問題の要因を分析し、着目する文化的次元を絞り込む
③↓ 解決方針の決定
④↓ 解決策の立案
⑤↓ 解決策の実施
*Step2には、如何に「文化・国民性の違い」を定量化し、観察できるのかに関して、ホフステッド指数を紹介します。
ホフステッドの国民文化の6次元
多くの海外の日本人の方は長年現地住むことによって、「文化・国民性の違い」を感覚で捉えているのだと思いますが、できるだけ早く調整をしたい場合は文化を学ぶことによって、少しでも早く理解を深めたいものです。
そこで組織における文化心理学で世界的に最も有名なヘールト・ホフステードが作った『ホフステードの文化次元論』についてご紹介します。この理論は異文化コミュニケーションについて理解を助けてくれるフレームワークで、特定の社会の文化が、その社会のメンバーの価値観にどう影響するのか、また、その価値観がどう行動に影響するのかについて説明しています。
- Power distance index (PDI) 上下関係の強さ
- Individualism (IDV) 個人主義傾向の強さ
- Uncertainty avoidance index (UAI) 不確実性の回避傾向の強さ
- Masculinity (MAS) 男らしさを求める強さ
- Long-term orientation (LTO) 長期主義的傾向の強さ
- Indulgence versus restraint (IVR) 快楽的か禁欲的か
フレームワークの概要
様々な国の文化(国民性)を定量的に測定し、指数化しようとしたのがヘールト・ホフステッドです。 ホフステッドは米IBMの世界40カ国11万人の従業員に行動様式と価値観に関するアンケート調査を行い、 1980年にはその国の文化と国民性を数値で表すことのできる「ホフステッド指数」を開発しました。
ホフステッド指数は、以下の6つの指標で構成されています。
1. Power distance index (PDI) 上下関係の強さ
社会的権威による距離とは、権威のないメンバーが、力の配分は平等ではないということをどれだけ認識しているか、その度合いを示します。従って、この指標が高い組織では、組織内に階層があるということが認識されていて、それに説明を必要としません。この指標が低い組織では、力の分布が平等です。民主的な組織ではこういった傾向があると言えます。
両国とも権力の格差が大きな社会ですが、ベトナムの方がより相対的にその傾向が強い事が分かります。これは、日本人の立場で考えると、ベトナム企業では上司が部下対して絶大な権力を有している事を意味します。
オフショア開発では、その発注形態から、どうしても日本人がベトナム人に作業指標を与える場面が多くなります。一時的に、日本人=ボス、ベトナム人=部下という仮想的な上下関係が生まれるため、仕事するときに、普段より厳しく指示した方がいいとする心理が生まれます。ベトナムの文化には中国の文化が色濃く残り、特に孔子の思 想が深い影響を与えています。長年封建制のもと、上下関係を重視し、個人の自由や権利を認めないという事で以上の現状を説明できます。現在に至るまで、その思想の影響はもちろん薄まっているものの、依然としてその傾向は残っています。ベトナムの現状から見ると、特に国有企業の中、その上下関係の強さが実感されています。いつも、上司に好まれるため、自発的に賄賂したり、年末年始に上司の自宅に出向き、プレゼント(金)をしたりする。問題はそれが当たり前のことだという風潮がまだ残っていることです。
ベトナム人は外国人を好むのは事実で、特に日本から出張してきた日本人、ベトナム人の方が現地の上司より好まれます。上下関係の強さから見ると、日本から来た人の方が上位に立つからです。
2. Individualism (IDV) 個人主義傾向の強さ
個人が集団に統合されている度合い。個人主義社会では、個人の達成や権利に重点が置かれます。個人が自分自身やその家族の権利を主張し、仲間を選択します。逆に集団主義社会では、個人は主に一生涯続く、統合力のある組織の一員として行動します。ここでは個人は拡大家族に対して不動の忠誠心を持ち、その代わりに、何かがあったら家族から守られます。
両国とも集団主義の傾向が強い社会です。しかしベトナムの方が相対的により集団的です。ホフステードの調査結果は、ベトナムが世界中で最も集団祝儀の傾向が強い国の一つであることを示します。これはベトナム人の血縁関係や友人といった自分の近い人間関係をどの民族より大事にする文化的特徴を評価した結果です。
確かに、ベトナム人は同じ会員やグループのメンバーとの関係に非常に気をつけます。あまり喧嘩したくない、コンフリクトを発生したくない、対立したくない、という心理から場の空気を読んで行動する傾向があります。彼らは人間関係の方が仕事の効率、結果より優先されていると考える傾向があります。日本人と同じで、直接的に言いたいことが言えません。人間関係優先なので、会社の仕事、公事であれば、他の人の行動を見てから行動します。先にやる人、自発的にやる人はあまり好まれないからです。
日本人は仕事中であれば、私語をせず自分の仕事を黙々と進めます。それに対して、ベトナム人はそれができず、仕事中交流しながら、仕事を進めます。周囲と仲良くしてから初めて仕事ができると考えているからです。周囲との関係が良好でなければ仕事ができません。
逆に言うと、個人主義の傾向の強い方なら、最大の目的はグループの中の他の人との人間関係より、仕事の成果、グループの公事の完了の方に重きをおきます。
ベトナムにある企業の管理者に向け調査が行われ、以下の結果がわかりました。
調査のシチュエーションは、ある上司が部下と一緒に出張しているところ、急に部下の子供が病気になり、入院させなければならなくなったというものです。多くの管理者は公事に悪影響を与えると分かったうえで、止むを得ず、その部下を有給で休ませました。このことから、ベトナム人にとって重要なポイントは仕事ではなく、関係良好の基盤を作り、長期的にその部下と人間関係を築くことであるとわかります。この傾向のメリット・デメリットは以下の通りです。
・メリット:予想外の出来事の対応に柔軟性があり、管理者が合理的に判断するため、従業員が不満なく、仕事の人間関係が良好で、楽に仕事できます。
・デメリット:自発的に責任とることが少なく、公事が完了できないのは自分の責任だと言える人がいないというのが現状です。
3. Uncertainty avoidance index (UAI) 不確実性の回避傾向の強さ
社会がどれだけ不確定さや曖昧さを許容するか。つまり、メンバーが不確定さを最小限にするために不安をどう処理するかの度合いに現れます。不確定さを避ける度合いが高い社会では、人々は感情的になる傾向があります。未知や不慣れな状況があれば、慎重に一歩一歩、物事を計画し、ルールや決まりを制定します。逆に不確定さを避ける度合いが低い社会では、未知や不慣れな状況があっても、不快に思わず、できるだけ数少ないルールで対処しようとします。この社会の人々は変化に寛容で、実践を重視します。
日本とベトナムは対極的な傾向を示します。すなわち、日本人が几帳面で、ベトナム人が臨機応変なタイプです。オフショアでは、品質保証の場面でこの次元が影響します。また、ベトナム社会の人材流動的の高さも、この文化の次元を用いて説明できます。ベトナムの変動の激しい歴史を見ると、平均的に30年ごとに戦争が起こっていました。安定できる生活ができず、リスクや危険に常に対面しているベトナム人は急な場面に対して、柔軟に対応しなければと生き残れませんでした。現在でもそのような心理を受け継いでいるベトナム人は、新しい環境に入ると、早めにその環境に合わせるため自分自身を調整します。
それらのことから、オフショア開発における問題発生の際、迅速に対応し、トラブルの拡大を抑制するのが得意だと評価されています。逆に、迅速な対応をするにあたり、日本のビジネスマナーであるホウレンソウが仕事の進捗を阻害していると考えているベトナム人も少なくないです。
4. Masculinity (MAS) 男らしさを求める強さ
男性的な文化では、競争、アサーティブさ、物質主義、野心、パワーといったことに価値を置きます。女性的な文化では、関係性や人生の質に価値を置きます。男性的な文化ではジェンダーの違いははっきりしていて、女性的な文化では男女が同じ価値観を持ち、謙虚さと思いやりが強調されます。「人生の量か人生の質か」と言い換えられたりもします。
失敗への恐怖はオフショアに対する日本人の冒険心を低下させる理由だと言われています。ここでは、常識の意味ではなく、ホフステーデの分析による男性・女性の言葉を理解してほしいです。 一方、ベトナム人は向上心が強いですけど、裕福や贅沢より「生活の質」にこだわったスタイルで快適に暮らしています。彼らはどちらも断定的であり、直感的に物事を決定しがちです。さらに、平等な扱いを重視し、太っ腹で困難にある他人のことでも助けてしまいがちです。
5. Long-term orientation (LTO) 長期主義的傾向の強さ(俗にいう、アリとキリギリスの話)
長期的思考の社会は将来に重点を置きます。ここでは辛抱、節約、対応力といった、報酬を目的とした実践的な価値観が推奨されます。短期的思考の社会では、安定、伝統の尊重、世間体、社会的義務の遂行、恩返しなどといった過去や現在に焦点を当てた価値観が推奨されます。
ベトナム人は長期的ではなく、短期的思考な特徴があります。 ビジネスでは、これが最も明白です。多数の企業が即時の利益ばっかり追求していて、長期戦略に目を向ける企業はまだ少ないです。 おそらく過渡期の社会の不安定であるため、そういう行動をせざるをえないだと考えられます。それは個人レベルまたは家族関係に明らかに反映されています。(良い将来になるよう、コツコツ貯金する思考)
日本では、全く異なります。四半期ごと利益より、長期戦略に向いて、 R&Dに力を入れ、安定した市場シェアの成長を優先する傾向にあります。
6. Indulgence versus restraint (IVR) 快楽的か禁欲的か
メンバーが自分の欲求や衝動をどれだけ抑制するか。この度合いが低い社会は、楽しみに関連する、基本的な人間の欲求に対して寛容的になり、この度合いが高い社会はそういった行動は社会的基準によって、制御、抑制されるべきだと考えます。
42、 35という低いスコアを持つ日本とベトナムは、拘束の文化を持っていることが示されています。 この次元でのスコアが低い社会は、皮肉と悲観論の傾向があります。 また、贅沢な社会とは対照的に、拘束された社会は余暇をあまり重視せず、彼らの欲求の満足を制御しません。 この志向の人々は、彼らの行動が社会的規範によって抑制されているとの認識を持ち、自分自身を甘やかすことは多少間違っていると感じています。
4. 実践事例
実践事例 ①
ある日本企業が2NFに案件を発注しましたが、仕様書の内容が曖昧で、明確な課題が指摘されてない状況でした。また、お客様の企業の展開プロセスの知識(ノウハウ)や経験がほとんどありませんでした。
問題:
① 要件の詳しい内容がなかった。
② ベトナム人のエンジニアがその曖昧な仕様書を読み、理解してないまま、プロジェクトを展開した。
この場合:上下関係の強さ、不確実性の回避傾向の強さという次元に絞り込み。
解決立案並びに実施:状況を考慮して、文化差異に基づく問題を解決するための方針を決定。
- まだ完全に課題を把握していないことがあれば、エンジニアはすぐにお客様への質問を徹底的に実施する。
- 管理者はそのエンジニアにやり方、課題の追求のやり方などについてサポートする。
- お客様が課題を明確に提供できない場合、オフショアチームが解決案を見つけるまでお客様とミーティングを行い、mock-upを作成して、必要であれば仕様内容を更新する。
- その後、お客様が要望する機能を小さく分けて、わかりやすくお客様に説明する。納得してもらえたら、プロジェックトの開発を開始します。
実践事例 ②
勝手に作業を進めるきらいがある。
問題:
① 問題が発生しても、全く報告せずに自ら勝手に解決する。解決できなければ報告し、結果計画の通りにいかず、時間が無駄になる。
② 締め切りになっても、連絡がない。または、翌日にようやく謝罪の連絡が届く。
③ 連絡窓口が予め報告せず、勝手に休暇をとった。
この場合:個人主義傾向の強さ、不確実性の回避傾向の強さという次元に絞り込み。
解決立案並びに実施:状況を考慮して、文化差異に基づく 問題を解決するための方針を決定
・メンバーそれぞれに責任を負わせるため、徹底的に仕事の分業を行う。
・ホウレンソウという原則は徹底的に実施され、社員に対して平等に扱う。
・連絡窓口が一人ではなく、その担当の管理者も連携して、連帯責任を負う。
・毎日、毎週の報告を提出し、チームやグループに共有する。
決策の実施による効果
・レビューコメント対応のための後戻り作業の減少&作業工数の削減
・納品の遅れの挽回&計画通りに目標達成
・お客様・2NFエンジニア双方のストレス軽減
2NFは問題解決経験が豊富で、オフショア開発のコスト削減メリットが発揮できると評価されています。