「Salesforce」の人気を解読!
顧客満足度を向上させて売上を拡大させる顧客関係管理(CRM)のアプリケーション「Salesforce(セールスフォース)」は、今や世界を席巻する勢いで売上を伸ばしています。Salesforceの価値は120億ドル(約1兆3000億円) といわれており、CRM市場の20%を占有し、何百万もの開発者がSalesforceプラットフォーム用のアプリを構築しています。
なぜこんなにもSalesforceがCRMの世界で圧倒的人気を誇っているのか、データサイエンティストのTaimur Abdaalさんがつづっています。
<目次>
1. CRMとは?
Salesforceがなぜこんなにも人気を集めているのかを理解する前に、まずCRMの歴史を知っておく必要があります。
かつて、顧客や売上の管理は完全に手動で行われ、名刺は「Rolodex」と呼ばれる物理的なホルダーでインデックスを付けて保存されていました。そして企業の従業員は、Rolodexで保存された名刺を元に直接メールを送ったりテレマーケティングを行いました。
Collections in Motion: Rolodexes – YouTube
その後、1980年代に入りパーソナルコンピューターが出現すると「連絡先管理サービス」が拡大し始め、Rolodexがデジタル化されたことで、「データベースマーケティング」に注目が集まります。
顧客をデジタルで管理できるようになったことで企業は「ターゲット」「見込み客」といったように顧客を分け、カスタマイズされたメッセージを送るようになりました。
1990年代に入り、「連絡先管理・タスク追跡・レポート作成などの販売プロセスを自動化する機能と一緒に全ての顧客データを一元管理する」というアイデアが生まれます。
この時、営業支援システム(SFA)、顧客インタラクションソフトウェア(CIS)、エンタープライズコンテンツ管理(ECM)といったさまざまな名前の管理ソフトが生まれ、最終的にCRMという名前が定着しました。
2. なぜCRMが必要なのか?
販売の詳細情報を管理するのはビジネスの基本になります。会社に所属する連絡先の個人(Contacts)、見込み客の連絡先(Leads)、会社名(Accounts)、契約(Opportunities)といった詳細情報を得ることで、見込み客が商品に興味を持っていた時に「どのような対応をすればいいか?」という文脈のもとで話をすることができます。
もちろん顧客が少ない時はスプレッドシートで事足りますが、顧客が増えていくにつれ、さまざまな検証、重複排除ロジック、行作成などが必要になります。このようなスプレッドシートでは足りない、という時にCRMが登場するわけです。
CRMはスプレッドシートと異なりデータ入力を自動化し、エラーを最低限に抑えるよう設計されています。CRMは記録を行うタスク管理の方法で、ある意味では自動メールや通話記録が入力された単なるCRUDアプリともいえます。
3. Salesforceは何が違うのか?
一方、Salesforceが単なるCRUDで終わらない理由の1つは、その柔軟性にあります。多くの場合、ビジネスの形や顧客によってCRMに用いるエンティティはさまざまです。
学術分野でセールスを行っている場合、記録する内容は「学部」や「大学」になってきます。このため、CRMもビジネス顧客に応じたカスタマイズが必要になりますが、多くのSaaS(Software as a Service)はUIをカスタマイズできず、「ビューの中にこのボタンを追加した方が便利だ」と思ってもどうすることもできません。
CRMの中には全ての会社に同じセットアップを強いるところすらありますが、Salesforceは非常に柔軟で、ビジネス形態にあった形でカスタマイズが可能です。CRMの世界でSalesforceが人気を集める最も大きな理由はここにあるとAbdaalさんは語りました。
Salesforceはデータタイプや制約を元に、データベースのようにテーブルを作成することが可能。学術界でセールスを行うのであれば「大学」や「学部」といったオブジェクトを作って互いにリンクさせ、それぞれの「見込み客」のオブジェクトにくっつけることができます。これらの作業をコードを書くことなく完了させることができるのも、Salesforceのポイントです。
そしてSalesforceはフロントエンドフレームワークのようにカスタムレイアウト&UIで新しいビューを作ることも可能。見込み客の認定プロセスでは、未認定の見込み客だけを表示させ、彼らを認定あるいは却下するために必要な情報が何かも示すことができるとのこと。そして、これも、コード1つ書くことなく行えます。
データモデルとUIをカスタムできることにより、Salesforceはビジネスのニーズを満たすのに十分な設定を行えるようになります。また機能強化ツールのAppExchangeを使えばより高度なカスタムも可能になります。
4. Salesforceのアイデアの元
なぜSalesforceのようなSaaSが生み出されたのかは、90年代後半にまでさかのぼります。SalesforceのCEOであるマーク・ベニオフ氏はオラクルを退社後、Amazonなどに見られるコンシューマーソフトウェアの「シンプルさ」「使いやすさ」への傾向に目をつけました。
当時のソフトウェアは複雑で高価なものが多かったため、それとは反対をいく理念でSalesforceを差別化することをベニオフ氏は考えました。またベニオフ氏はソフトウェアを電気や水道のような位置付けにしたかったため、Salesforceを「使用に応じた価格」となるよう設定したとのこと。
通常、否定的なスローガンを掲げる広告はうまくいきませんが、Salesforceはあえて「NO-SOFTWARE」という広告を打ち出しました。社内では多くの従業員から反対された広告でしたが、「ソフトウェアを終了したい」と考えていた企業にひびき、見事これが成功。
その6年後、Appleよりも前にソフトウェア配布方法として「App Store」を立ち上げました。なお、Appleの元CEOであるスティーブ・ジョブズはベニオフ氏のメンターだったそうで、過去には「アプリケーション経済を作ること」をジョブズから助言されたそうです。
2005年、誰もがSalesforceのアプリを作って配布できるAppExchangeというオンラインマーケットプレイスが誕生。2019年時点で毎年何十億ドルというお金がAppExchangeのアプリに費やされ、多くの会社がそのアプリの上に成り立っています。
なお、このオンラインマーケットプレイスはもともと「App Store」という名前が計画されていましたが、マーケット調査の結果「exchange」という言葉が好まれるということが示され「AppExchange」になったそうです。このとき取得していた「App Store」の商標や「appstore.com」というドメインはiOS App Storeの立ち上げ時にベニオフ氏からジョブズにプレゼントされました。
AppExchangeが登場した後の数年間で、Salesforceは「ソフトウェアなし」という目標に忠実な製品をリリースしていきました。かつてのソフトウェアの、「営業担当者によって箱入りのソフトウェアが販売される」という確立されたモデルを見て、「ソフトウェアを捨てる」という新しい方向性を打ち出したのがSalesforceであり、企業がソフトウェアを購入して構築するそのものの仕組みを変えることで成功したという点が画期的だったわけです。
まとめ
Salesforceはそれまでの世間のソフトウェアの“当たり前”を一掃し、新しい感覚と共に開発されたソリューションであるとご理解いただけたと思います。最大の特徴である利便性と柔軟性の高さが多くの企業を掴み、新たなトレンドを生み出したとともに、現在のような目を見張るような普及率に至ります。
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参考文献:https://gigazine.net/