2020年と2021年の日本国内IT市場
2020年、予想だにしていなかった新型コロナウイルスが日本に到来し、人々の暮らしから社会面、経済面に至るまで、かつての“常識”が覆される記憶に残る1年となりました。IT業界、市場ももちろん例外でなはありません。一方で一部のテクノロジーは、コロナ禍の人々や社会の需要にはまり、それらが顕著なスピードで進歩・普及を遂げる環境作りにも作用したといえます。つまり新型コロナウイルスの流行は“新たな需要とITに形”作りに貢献したのです。では、具体的にどのように変化したのでしょうか?
IT専門調査会社IDCJapanは毎年、年末に翌年の日本国内IT市場において鍵となる技術や市場トレンドなどの主要な10項目を発表しています。今回はこの2020年版と2021年版を比較し、考察してみましょう。
2020年
- DXの進展
- Future of Work
- クラウドの変化
- 安心なデータ共有:
- インテリジェントビジネスプロセス
- サイバーセキュリティの進化
- エッジにおける競争
- サービスビジネスモデル変革
- IT人材獲得競争
- 立ち上がる5G
1.DXの進展
2020年予想の考察で、まず挙げられている言葉は「DX(Digital Transformation|デジタルトランスフォーメーション)」です。経済産業省によると、DXは『企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること』と定義されています。2018年より国も積極的にDXに向けた取り組みを行っています。
2020年、企業のDXへの投資は継続、増加し、「自社に本当に必要なDX」や、従来の情報システムとの連携も含めた全体最適の動きが強まるとの見方が。2020年度はオリンピック開催や5Gの商用サービスの始動を受け、包括的なDXの拡大準備が進むものと見込まれていました。
2.Future of Work
Future of Workは“ワークモデルを根本的に変えるコンセプトで、人とマシンの協働を促進し、従業員スキルと従業員エクスペリエンスを向上させ、時間や物理的な場所といった制約から解放された労働環境を実現するためのフレームワーク”で、ワークカルチャー、ワークスペース、ワークフォースの3つの柱の変革がDXを支える。
3.クラウドの変化:
2020年の国内クラウド市場は高い成長を継続するが、カオス期を迎える。
クラウドファーストの考えがもたらした「結果としてのマルチクラウド」の状態の中、どのクラウドを選ぶのかはますます複雑になっている。その中で企業内のクラウドCoE(Center of Excellence)の重要性が増し、それを通じたクラウドの統合管理を行う企業が増加する。
4.安心なデータ共有:
社外とのデータ共有を行うためのテクノロジーの技術進化が安心感の醸成に寄与し、サプライチェーンなどの分野で適用事例が広がり始める。
より広いデータのアクセス/活用が企業競争力の源泉になる一方、それをセキュアに実現することには課題がある。2020年には、その技術的な解決の一方法としてブロックチェーンの活用が始まる。
5.インテリジェントビジネスプロセス
約半数の企業がAIベースのソフトウェアを使用して、運用および顧客/従業員エクスペリエンスを実現する。
AI(人工知能)やRPA(Robotic Process Automation)を活用した業務オペレーションの自動化が進み、企業の外部プロセスにも拡大する。2020年はこのようなプロセスの自動化ユースケース(用途)が多様化していく。
6.サイバーセキュリティの進化
東京オリンピック/パラリンピックはサイバーセキュリティにとっても一大イベントであり、想定外のセキュリティ侵害の可能性を踏まえたうえで、企業/組織はセキュリティに対する考え方を大きく見直す。
7.エッジにおける競争
ITインフラは、DXを支える「データ基盤」になっていき、データを保有する場所の多様化も進む(オンプレミス/オフプレミス、クラウド/非クラウド など)。エッジでのデータ処理や保存も加速し、エッジインフラ市場の成長と競争の激化を招く。
8.サービスビジネスモデル変革
これまで製品供給側で先行してきた「as a Service(従来の製品機能をサービスとして提供する)」ビジネスへの取り組みが、サービス提供側においても本格化する。
2020年は多くのサービス提供側が産業特化型/特定領域における「as a Service」のビジネスに取り組むことが本格化する1年となる。
9.IT人材獲得競争
2020年は、既存システムのレガシーモダナイゼーション(古くなったIT資産(レガシーシステム)を最新技術に対応させ、近代化を図ること)が進む年になる。アーキテクチャ変革やアジャイルの採用など開発手法の変革にあたり、デジタルサービスに必要なスキルやクラウドネイティブアプリケーション関連の技術を持つ人材が不足する。
10. 立ち上がる5G
5Gサービスが開始される。2020年時点では5Gの利用は限定的だが、関心は主にローカル5Gに集まる。ユースケース開発が進み、これらの分野におけるノウハウ蓄積や新たなツール開発が進む。デバイス分野の5G適用も進む。
2020年の実際のIT市場
実際には2020年の国内IT市場は新型コロナウィルスの感染拡大に大きく影響を受け、IT投資計画の先送り/見送り、国内企業の業績悪化に伴うIT支出の減少がみられました。その一方で、テレワーク環境の整備に向けた設備投資が好調であることや、大企業を中心に大規模システムの刷新/公開が概ね予定通りに実行されました。国内企業のデジタル化、デジタルトランスフォーメーション(DX)を加速を促したのも事実です。このことから、2020年度の市場規模は前年度比横ばい程度の見込みです。2020年のキーワードとして、リモート、コンタクトレス、ディスタンスが挙げられる中、クラウド、モビリティ、AI/機械学習、セキュリティなどが大きな役割を果たしました。
2021年
株式会社矢野経済研究所の調査結果によれば、2021年度はコロナ禍による業績不振の影響を受ける形で、不要不急のシステム/サービスの先送り/見送りなど、企業のIT投資が縮小傾向になると見込まれることから、国内民間企業の市場規模は前年度比4.3%減になると予測されています。
そんな中、2021年におけるITサプライ側で起こる主要10項目は以下の通りです。
- DXとFuture Enterprise
- AIによる自動化
- 次世代インフラ
- クラウドセントリックIT
- セキュリティの進化
- 5G
- ソフトウェア開発革新
- IT人材、IT組織
- デジタルガバメント
- 非接触/非密集
1. DXとFuture Enterprise :
2021年の国内ICT市場は前年比1.1%増に留まるが、COVID-19を契機とした国内企業のDX支出は継続する。
2. AIによる自動化
コンタクトレスが組織横断的な業務プロセスの自動化を牽引しAIがサイロ化されたインテリジェンスをエンタープライズ全体に解き放つ。
3. 次世代インフラ
次世代インフラの台頭はベンダーやサービスプロバイダーの新たな競争環境を生み出す。
4. クラウドセントリックIT
DXを推進するデジタルレジリエンシーを強化するために、クラウドセントリックITが広がる。
5. セキュリティの進化
セキュリティの複雑化によって、統合されたエコシステムやプラットフォームフレームワークによるセキュリティソリューションの導入が加速する。
6. 5G
5Gタブレットの登場、ローカル5Gへの取り組みの加速、5Gエリアの拡大によって、新しい産業アプリケーションの可能性が広がる。
7. ソフトウェア開発革新
クラウドネイティブとローコード/ノーコードの進展が内製化を加速させ、ITサプライヤーにビジネスモデルの変革を迫る。
8. IT人材、IT組織
DXに向けた国内企業のIT人材やIT組織変革の流れは加速し、それに向けたITサプライヤーの支援サービスも強化される。
9. デジタルガバメント
国内のデジタルガバメントの進展によって、官民連携のデータ流通が加速しFuture of Industry Ecosystemsが形成される。
10. 非接触/非密集
ネクストノーマルに向けた非接触/非密集型ソリューションと、発生するリアルタイムデータ分析市場が成長する。
2021年の傾向
IDC Japanは、2021年は2020年で起こり、普及したこれらの動きが定着化するだけでなく、企業が新たなビジネスモデルや競争の方法を模索するネクストノーマル(ニューノーマル)が起こるとしています。また、デジタルテクノロジーの重要性はさらに高まり、企業にとってDXを実現していることが今後も成長を続ける前提条件である「デジタル優位」の社会が早いうちに訪れると予想されています。
まとめ
2021年は緩やかに成長を続けていた国内IT市場規模がついにマイナスになると予測されています。しかしながら、世界経済の立ち直りに加え、5Gの普及や働き方改革、AIやIoTの需要の増加、複雑化するセキュリティ問題など、IT市場には依然として更なる成長が見込まれる多くの分野が背後に列をなしているのも事実です。
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