ブレンダン・アイク~JavaScriptの父~
米GitHubは12月2日、2019年10月からの1年間で最も利用者数の多かった開発言語はJavaScriptだったと発表しました。これは年次レポート「The 2020 State of the OCTOVERSE」の中で発表したもので、JavaScriptは2014年から首位を独走しています。JavaScriptはべた書きが主流だった時代を経て、jqueryの登場でJavaScriptの存在価値は大きくなりました。
そして最近ではAngular、node.jsといった便利なライブラリの登場でJavaScriptが担う範囲は拡大し、さらに効率的な開発も可能になっています。そんな中、JavaScriptの生みの親は誰なのかあまり知られていません。今回、2NFSoftwareがこの先の歴史に名が残るであろうその人物についてご紹介します。
<目次>
1.ブレンダン・アイク氏とは?
ブレンダン・アイク氏(1961年7月4日生まれ)はアメリカ人技術者であり、JavaScriptプログラミング言語を生み出した人物です。Mozillaプロジェクトの創設者にあたり、Mozilla Foundation、Mozillaグループの創業者、同時に短期ではあったもののMozillaグループの元テクニカルディレクター及び元取締役社長でもあります。現在はBraveSoftwareの取締役社長を務めています。
生い立ち
ブレンダン・アイク氏はメリーランド州のピッツバーグ、ゲイザースバーグ、カリフォルニア州のパロアルトで育ちました。エルウッド・P・カバリー高校を1979年に卒業後、サンタクララ大学で数学と計算機科学の学士号を取得する傍ら、1985年にイリイノ大学アーバナ・シャンペーン校で修士号を取得します。
彼のキャリアはOSやネットワーク関係の仕事を担当したシリコングラフィックスでの7年間から始まります。その後、民間企業であるMicroUnity Systems Engineeringに3年間在籍し、マイクロカーネル及び DSPのコードを専門とする一方で、MIPS R4000 へのGCCコンパイラコレクション移植を行いました。
2.NetscapeとJavaScript
1995 年4月からNetscape Communications Corporationに勤め始めたアイク氏は、当初Schemeの“ブラウザ配置”案を持ち込むものの、当時の彼の上司はJavaと同じシンタックスであると頑なに譲りませんでした。その結果として、アイク氏はSchemeプログラミング言語と同様に多くの機能を備え、Selfのオブジェクト指向プログラミング、Javaのシンタックスを持つ新しい言語を発明しました。
アイク氏は10日のうちに最初のバージョンを完成させ、 Navigator 2.0 Beta(当時はMochaと呼ばれました)のリリース時期を確定しました。その後、1995年9月にLiveScriptと名前を変え、12月についにJavaScriptと命名されます。アイク氏はNavigatorのJavaScript向け詳細機能実装コードであるネームコードSpiderMonkeyの開発研究を続けます。
3.Mozilla
1998年頭、アイク氏は無料オープンソースMozillaプロジェクトを共同創設します。Jamie Zawinski氏などと共に、Netscapeソースコード向けのオープンソース貢献の管理を行うため、ウェブサイトmozilla.orgを制作します。アイク氏はMozillaのチーフソフトウェアアーキテクトでもあるのです。1999年にAOLがNetscapeを買収し、2003年7月Netscapeブラウザユニットが閉鎖された後は、Mozilla Foundationの創設に取り組みます。
2005年8月アイク氏はメインテクノロジーエキスパート及びMozilla Foundation役員の座についた後、MozillaCorporationのテクニカルマネージャー(CTO)となります。これは支店がMozilla Foundationの利益のために稼働するとこを意味します。アイク氏は2011年に所有権移転をするまで、Mozilla SpiderMonkeyモジュール並びにそのJavaScriptエンジンの“所有”を続けました。
4.CEOへの就任、論争と辞任
2014年3月24日、Mozillaはアイク氏をMozillaCorporation取締役社長に登用することを決定します。この件はアイク氏の過去の政治的支援金を理由に、広く批判を浴びることになります。具体的には、
2008年にカリフォルニアの提案8へ1000ドル相当の寄付、カリフォルニアでの同性婚禁止の呼びかけ、及び提案8の支援者Tom McClintock氏への2100ドルの支援です。当初、Wall Street Journal紙は来るアイク氏のCEO就任反対にあたり、Mozillaの取締役会の半分(Gary Kovacs氏、 John Lilly氏、 Ellen Siminoff氏) がMitchell Baker氏、 Reid Hoffman氏、 Katharina Borchert氏を残して退任したと報じました。その後CNET紙は、抜けた取締役会3名のうち、アイク氏によって指名されたJohn Lilly氏のみが残っていると報じました。John Lilly氏はニューヨークタイムズに対し、“私は去って、彼に会う約束をしたわけではない”と詳しくは語りませんでした。
2014年3月26日、アイク氏は“痛みを引き起こしたための悲しみ”を示し、Mozillaにおける“LGBTコミュニティと自らの共同者との取り組み”を確約しました。一部の活動家は、オンラインデートサイトOkCupid に対し、アイク氏の寄付金に関する情報と別ブラウザへの移行を求める自動メッセージをFirefoxユーザー向けに表示するという、反アイク氏キャンペーンを行っていました。(しかし、ユーザーたちにはFirefoxの使用を続けるリンクを提供していました。)その他にも、CREDOMobileはアイク氏の辞任を求めるサインを5万人以上から集めました。
結果として、取締役社長に就任してからたった11日後の2014年4月3日、同性婚反対によりアイク氏は辞任し、Mozillaを去ることになります。自身の個人ブログで、“現在の状況では私は能率的なリーダーを務めることはできない。”と投稿し、プレスリリースではMozillaは取締役員たちはアイク氏を別ポジションでの引き留めを行っていると述べられていましたが、アイク氏はこの機に完全にMozillaとの関係を断ち切りました。
5.Brave Software
MozillaのCEOの座を去って一年後、ブレダン•アイク氏は以前Khan AcademyとMozillaで共にしたソフトウェア開発者Brian Bondyと共にBraveSoftwareを設立しました。アイク氏は広告をブロックし、それを別の広告で差し替えるという目標の下、パソコンと携帯電話向けのブラウザの開発をしたいと考えていました。もし開発に成功すれば、Braveは広告ネットワークへの支払いに代わって、広告希望者がブラウザの構築者に支払いをするという現在の広告の在り方を全面的に変えることになります。
新ブラウザを構築するというこのアイデアは、彼が各ウェブサイトの新たなマーケティングモデルについて明確に認識した際に、アイク氏の頭の中に浮かんだものです。“多くの人は自身が開拓するコンテンツに支払いができず、一部の人は有料サービスへ支払いをする十分な経済力がない。そして支払いの方法を知らなかったり、クレジットカードを信頼できない人もいる。”
この巨大なアイデアは、全ての広告やトラッカー、個人データ収集をブロックし、それらをブラウザが提供した広告、すなわちユーザーのプライバシーを尊重し、個人データの収集のためにパソコンが遅くならない、またはモバイルデバイスの限られたパワーソースを消費しない広告に差し替えます。この計画は広告収入の再配置を行い、ウェブサイトの管理者とユーザー両方が広告からお金を受け取れるようにします。それに加え、Braveは広告総収入の55%をコンテンツの発行側にもたらすとしています。アイク氏は、コンテンツ発信側は広告ネットワークより更に多くの収入が得られるだろうと話します。Braveは利益の15%を広告ネットワークパートナーへ、15%を自身への利益とするとしています。
残りの15%はユーザーに渡ります。それに際し、Braveはユーザーがロボットかどうか判別する手段を構築予定で、他にもユーザーがお金を払えば完全に広告を表示させないようにする予定です。このモデルが成功すれば、他の複数のブラウザがユーザープライバシー保護のために基づく、Braveが新しい基準となることを望んでいます。
その傍ら、ブレダンアイク氏は” 場違い”に表示される広告ウィンドウや、維持のために広告利用サイト上で過度なリソースを消費する広告に対して、ユーザーは徹底的なブロックを望んでいることを感じ、現在の広告ブロッカーシステムはウェブの問題に直面しているとしています。
3年間に及ぶ試用を経た2019年11月13日、Brave はWindows、 Linux,、macOS、 Android および iOS向けバージョンをフルに持ち合わせるBrave 1.0を正式に発表しました。1.000.000.000
現在、毎月頻繫に使用しているユーザーは800万人と、10億人のユーザー数を誇るChromeやFirefox(ユーザーは1億人)という大物と比べると、まだまだ大物とは呼べません。しかし、Braveは雑誌PCWorldでは“群を抜くブラウザ”と評され、Wired では“Brave、すべてのデバイス上でChromeに代わりえる、プライバシーを第一に考えたブラウザ”という注目を集める記事が書かれ、広告とトラッカーをブロックすることで、ネット上に残すユーザーの“足跡”を減らすという性能が称されました。
これらのBraveのテクノロジーを称えた新聞やサイトの記事は、技術評論家の少し過度な興奮を印象付けます。しかし、情報技術業界が “Brave(勇敢な)”ソフトウェアが世界を股にかけている大物のChromeに敢えて挑む努力を信じ、Braveのもう一つの特徴を評価し、期待を寄せていると考えると、納得できる部分もあります。Braveのもう一つの特徴、それは“クリーン”なウェブ閲覧体験を提供するだけでなく、インターネットユーザーが広告を閲覧する方法を変え、ニュースの読み手が物理的なコンテンツを作成した人に“感謝”するチャンネルの作成したいというものです。
Braveの正式発表から、ユーザーが増えるかどうか見定めるにはまだ時間が必要です。果たして、今まで迅速で広告に邪魔されないウェブを夢見てきた多くのユーザーは、慣れ親しんだChromeからBraveに乗り換えるでしょうか?そして、“Googleの知識”に代わって、トラッキングされないプライバシーのあるネット体験を受け入れるでしょうか?
JavaScriptを生み出した“魔法使い”ブレダンアイクがもう一度世界を変えることができるのか、必見です。