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ベトナムのIT人材の現状
<2020年版>

投稿時間: 21:54, 09/08/2023

2020年も引き続き、世界から注目が集まるベトナムのIT業界。ベトナムではITエンジニアは若者に人気の高い職業であり、年々需要が高まっています。しかし、ベトナムのIT人材の実態はどのようなものなのでしょうか?また、コロナウイルスの影響を受け、生まれた新しい人材需要の形とは?現在進行形でIT業界が直面している課題と、ベトナムならではの人材の特徴をタイムリーにご紹介いたします。

<目次>

  1. IT人材の2019-2021にかけての予測
    1. 需要の増加
    2. ベトナムのIT業界は波乗り
    3. ベトナムもエンジニア不足?
  2. ベトナムIT人材へのコロナの影響
    1. 世界
    2. ベトナム
  3. IT人材の給料と働き方の特徴
    1. 給料
    2. 離職率
    3. 仕事や残業への意識

1. IT人材の2019-2021にかけての予測

需要の増加

 ベトナムIT業界専門採用プラットフォームであり、人材ニーズ調査会社でもあるTopDevによると、2015年から2019年にかけベトナムのIT関係の仕事数は約5倍にまで伸び、それに伴うITエンジニア需要も年々高まっています。更に2021年まで継続的に顕著に伸びていく見通しです。

 2020年4月時点で、約90%のIT企業が継続的な採用活動を実施する予定で、その中でも50%の企業が11~20%、25%の企業が21~30%ほどの人事規模拡大ニーズがあるという報告もあり、必要なIT人材は2020年には40万人、2021年には50万人までに膨れ上がるとされています。

 人材ニーズが高いのは経験2年以上の人材で、多くの企業が経験のある技術者を欲している状況です。言い換えれば、新卒の技術者でも経験を数年積むだけで仕事に困ることはなくなるということです。


2020年までのIT業界における人材需要の高まり(参考:TopDev)
ベトナムのIT業界は波乗り

 なぜベトナムは今このようにIT業界が“アツい”のでしょうか?IT人材需要が高まる理由の一つとして、ベトナムが海外テクノロジー会社の製品開発先に選ばれていることが挙げられます。観光業、農業、不動産業などにおける様々なサービスの電子取引(eコマース)化の波や起業の波を受け、ベトナムはそれらの製品開発を行う国として世界中から注目を集めています。日本から見ても、優秀な人材に恵まれている・親日国であるなど様々な要因から、多くの日本企業のオフショア開発委託先としてベトナムが選ばれています。

 現在、ベトナム全国でIT関連の教育を施す機関も増え、志高い多くの若者が専門的な技術や知識を学べるような環境の整備もされています。政府はベトナムIT業界の発展が国の経済発展への大きなパイプにつながるとして、優秀なIT人材を増やす政策や、ベトナムにおける国内外のIT企業の発展を後押しする様々な政策を実施しています。

ベトナムもエンジニア不足?

 一見、ベトナムのIT業界はエンジニア需要・供給共にバランスがとれているように思います。しかし、実は2020年には10万人、2021年には19万人のIT人材の不足が予想されているのです。ただし、日本国内のエンジニア不足(2020年には36.9万人、2030年には78.9万人不足)と比較しても、そこまで深刻でないことがわかります。

 また、上記のように政府の積極的な支援や、学習環境の充実、そして最も日本と異なる点“若年層人口の多さ”により、今後も持続的にベトナムのIT人材は数を増やしていくのは間違いないでしょう。

2021年までに予想される人材の需要数と不足数(参考: TopDev)

2.ベトナムIT人材へのコロナの影響

 2020年初頭から猛威を振るい、世界経済に甚大な影響を与えているコロナウイルス。2020年6月にベトナムは世界で最もコロナウイルス対策が優れている国ランキングの頂点に立ちましたが、コロナウイルスがベトナムIT業界に与えた影響はどうだったのでしょうか。

世界

 TopDevのVIETNAM IT LANDSCAPE 2020によると、世界的に見るとコロナウイルス流行後のIT人材の状況は他の業界と比べてとりわけて大きな影響はないものの、旅行業、運輸業、もしくはアメリカや日本など、甚大なコロナウイルスの影響を受けている海外のアウトソーシング企業からの間接的影響を一定数受けたと言えます。第1・2四半期は例年なら人材市場賑わう採用ゴールデンタイムと言われていますが、コロナウイルスの状況の複雑化により、一部の会社では、新社員を募集しないいわばフリーズ状態にならざるをえなかったり、更にはリストラを余儀なくされました。

ベトナム

 一方ベトナムでは、3月初頭から5月中旬にかけて50%以上のIT会社が人材募集を継続しました。その背景にはコロナウイルスの感染が広がりと共に、早急にテレワークにシフトしたことでIT業界需要へのマイナスな影響が少なかったことが挙げられるでしょう。その他37.3%は採用活動を停止しと共に内部社員のスキルアップなどのトレーニングを展開し、残りの約10%はリストラに踏み切りました。

 コロナが落ち着いた5月以降は、多くのIT企業が採用活動を引き続き行っていますが、採用傾向は変化し、採用に際しての条件を増やすもしくは高く設定したり、内部社員へのトレーニングを行いスキルアップを狙う会社が多くなっています。また、経験のある優秀な技術者を優先して採用する傾向もあり、例年と比べるとベトナムIT業界における就職・転職が やや難しい状況になっていると言えるでしょう。


3.IT人材の給料と働き方の特徴

給料

 ベトナムIT業界の各ポジションのプログラマー(経験あり)の平均月収(USD)は以下の通りです。(参考: TopDev)

 中でもAI技術者は、現在多くの会社でAIを応用した製品を開発する意向を示しているため、需要の高まりと共に平均給料も上がっています。また、IT業界において経験者への給料は、他の業界に比べて701~1000USDと一段と高くなっています。

 2019年の統計で、ベトナム人一人当たりの平均年収が2.800USDとなっているので、IT人材の給料水準がかなり高いことがわかります。給料水準や需要の高さが多くの若者に魅力的に映ることが、IT関連の学習人口が多い理由でもあるのです。

給与の変化は市場の価値の変化

 これまで低コストでオフショア開発ができるとされてきたベトナムですが、目覚ましい経済発展に伴い、ベトナム人技術者の給料も年々上がっています。そのため、今後は“開発コスト”ではなく、“品質”を求められる市場に変化していくことは明らかです。

離職率

 2019年の統計では、IT業界の離職率は24%で、ベトナムで最も転職率の高い業界トップ4入りしています。全体の63%ほどのディベロッパーが、良い機会があれば転職する意向を示しており、実際に転職した主な理由として、給料面に満足できない(45%)、昇格昇進のチャンスがない(40%)、スキルアップ(38%)のためという調査結果が出ています。

 これより、IT会社は人の入れ替わりが激しく、転職についてプラスに捉えている風潮があることがわかります。20か月がディベロッパーが一つの会社に在籍する平均期間となっており、IT業界の給料や福利厚生は日に日に良くなっているとは言え、優秀な人材の確保維持はIT市場全体における難しい課題となっています。

仕事や残業への意識

ベトナムの国民性からみる仕事のやり方

ベトナム人は日本人と同じように集団主義の傾向が強く、職場での人間関係を重視しがちです。予想外の出来事の対応に柔軟性があり、上司が合理的に判断する傾向もあります。(詳しくはブログ『ベトナムとのオフショア開発におけるコミュニケーション』をご覧ください。)

IT人材の傾向

 IT業界は多くの若い人材を柱に現在急速に発展し、実力があれば十分に将来が広がる分野でもあります。そのため、多くの若いIT人材は志が高く、常に自分の可能性を広げるチャンスを狙う競争率の高い世界となっています。また、ベトナム国内にとどまらず、積極的に英語や日本語を学んだり留学し、ディベロッパーとして海外で働いて経験を積み、最終的には自らの会社を立ち上げることを目標としている技術者もかなり多いです。

残業への意識

 残業に対する観念は日本と大きく異なります。ベトナムでは、基本的に理由や意味のない残業(いわゆる「サービス残業」)や「付き合い残業」、長時間にわたる残業は好みません。自分の仕事が終わったら、定時帰宅するのは当たり前で、それを咎める風潮もありません。

 ただし、納期が直前に迫っていたり、顧客からの緊急な要請に対応する場合など、本人たちにとっても明確で正当な理由があれば、責任を持って残業や休出に対応する認識は十分あります。


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